コールセンターのAHT(平均処理時間)を短縮する7つの施策

「AHTが長い」という課題はほぼすべてのコールセンターが抱えています。1件あたりの処理時間が1分長くなるだけで、年間の人件費に数百万円単位の影響が出ます。一方で、闇雲に短縮を求めるとオペレーターが焦り、対応品質が下がって折り返し電話が増えるという逆効果が生じます。
この記事では、AHTの正しい理解と、品質を落とさずに短縮するための7つの施策を解説します。
この記事でわかること
- AHT(平均処理時間)の計算方法と業界平均
- AHTを構成する3要素(ATT・ACW・ホールド)の分解分析
- AI活用を含む7つの短縮施策
- やってはいけないAHT削減の落とし穴
AHT(平均処理時間)とは?計算方法と業界平均
AHT(Average Handling Time)とは、1件の問い合わせ対応にかかる平均時間を示すKPIです。
AHT = (ATT + ACW + ホールド時間) ÷ 対応件数
| 構成要素 | 内容 |
|---|---|
| ATT(平均通話時間) | 顧客と実際に会話していた時間 |
| ACW(平均後処理時間) | 通話後の入力・記録作業の時間 |
| ホールド時間 | 顧客を保留にしていた時間 |
コールセンター白書2024によると、AHTの業界平均は約11.55分です。ただし業種・問い合わせ種別によって大きく異なるため、業界平均との比較より自社の過去推移との比較が重要です。
なぜAHT短縮が重要なのか
AHTが短縮されると次の効果が連鎖します。
- 1オペレーターあたりの対応件数が増える → 人件費効率が改善
- 待ち時間が短縮される → 顧客満足度が向上
- サービスレベルが安定する → 放棄呼・再入電が減少
ただし、AHTを短縮する目的は「コスト削減」だけではありません。後述するACW短縮は、オペレーターの残業削減や心理的負担の軽減にもつながります。
AHT短縮の7つの施策

施策1. ACW(後処理)をAIで自動化する
AHT短縮でもっとも即効性が高いのがACWの削減です。AIによる通話の自動要約・自動入力を導入すると、ACWを大幅に削減できた事例が複数報告されています。PKSHA Technologyのアニコム損保向け導入事例では、ACW工数を37%削減したことが公表されています。
通話終了後にAIが内容を自動要約し、顧客管理システムへ入力するまでを自動化することで、オペレーターは次の通話にすぐ移れます。
施策2. リアルタイム情報アシストでATTを短縮する
通話中にAIが会話内容を解析し、関連するFAQ・手続き情報・回答候補を自動でサジェストする仕組みです。オペレーターが「情報を探す時間」を大幅に削減でき、ATT短縮に直結します。
施策3. トークスクリプトを問い合わせカテゴリ別に最適化する
汎用的なスクリプトではなく、問い合わせカテゴリ・顧客セグメント別に最適化したスクリプトを整備します。特に「よくある質問TOP10」への回答フローを短縮するだけで、全体のAHTに大きく影響します。
施策4. ホールド時間の原因を特定して解消する
ホールドが長い原因は「情報が見つからない」「上長確認が必要」「システムが遅い」の3つに集約されます。原因別に対策を打つことが重要です。
ホールド削減の即効策
「保留中に顧客が聞いている音楽」を変えることより、「そもそも保留せずに済む知識ベースの整備」の方が効果的です。よく保留される問い合わせ上位10件をリストアップし、そこから改善を始めましょう。
施策5. 新人向けオンボーディングを強化する
新人オペレーターのAHTはベテランの1.5〜2倍になることが多く、早期立ち上げが全体のAHTを大きく改善します。ロールプレイング・録音フィードバック・バディ制度などを組み合わせた多層的な育成環境が効果的です。
施策6. セルフサービス導線を整備してシンプルな問い合わせを削減する
AHTを下げるもうひとつのアプローチは「そもそも電話をかけさせない」ことです。FAQ・チャットボット・マイページの整備により、シンプルな問い合わせをセルフ解決に誘導すると、コールセンターには複雑案件だけが集まり、平均AHTが下がる場合があります。
施策7. VoC分析でAHTが長い問い合わせの根本原因を解消する
AHTが長い問い合わせカテゴリを特定し、その根本原因(製品の分かりにくさ・案内の不足・プロセスの複雑さ)を解消することが、最も持続的なAHT改善につながります。
InsightVoiceでは全通話データを自動分析し、「AHTが長い問い合わせ×根本原因」を可視化するVoCレポートを提供しています。詳しくはコールセンターのVoC活用とは?をご覧ください。
AHT短縮でやってはいけないこと
「とにかく早く切る」は逆効果
AHT短縮目標をそのままオペレーターに課すと、問題が解決していないのに通話を打ち切る行動が生まれます。その結果、折り返し電話(再入電)が増え、トータルのコストはむしろ増大します。AHT短縮はFCR(初回解決率)とセットで管理することが鉄則です。
まとめ
AHT短縮の施策を優先順位順に整理すると、次のようになります。
- 即効性が高い: ACWのAI自動化・ホールド原因の特定と解消
- 中期的な効果: スクリプト最適化・新人育成強化・情報アシスト導入
- 持続的な改善: VoC分析による根本原因の解消・セルフサービス整備
闇雲に数値を追うのではなく、ACW・ATT・ホールドを分解して原因を特定し、優先度の高いものから手を打つことが大切です。AHTとFCRをセットで管理することで、効率と品質を両立した運営が実現します。
